お知らせ

ブログ fade-out 第4回「地中海を手に持って」

インターナショナル・クライン・ブルー。
テレビ放送大学の画面(美学芸術学研究第1回)に現われたヴィーナスは、青かった。
ヴィーナス像はスイスの実験芸術家イヴ・クラインの創り出した塗料(専売特許IKB)に被われていて、講師はその青色を、次元を超えた青、だと解説した。
その青は、深しんと暗いのに、ほの明かるいのだ。
色素の原子がおのずと発光しているとしかおもえない。
その暗黒力と光源力。この怪しさこそ、根源的なる青だ、といえないか。藍とは全然異う。
海でもない、空でもない、もしか、地球!?
火星から眺めた・・・・。
わたしはイヴ・クライン氏に会おうと決めた。
日本人はブルーが好きだ。
わたしも月夜の晩や夕暮れの空が好きだ。
カレイドスコープ昔館が開店してお客様は日に1人といった
閑な頃、尼僧姿の修道女が現われた。
「新幹線で、やっと来ることができました」
ひっそりとほほ笑まれた修道尼は、敬虔な振る舞いで、いくつかの万華鏡を手に取り、青で統制された万華鏡を買っていかれた。
別の日、芦屋から来られたというご婦人も、「ブルーが好きなの」とおっしゃった。
万華鏡を店の表の外光で眺め、嘆声をあげられた。
「まあ!!!・・・・。悲しくなるわ。うつくしすぎて」

わたしはテレビ放送大学に電話を入れた。
情報は「青いヴィーナス」はニース近代現代美術館に展示されているということくらい。
わたしは図書館へ走った。そこで開いた小型の画集「数の美術館」(河出楽器出版部)で知らされたことは思いがけなかった。
なんと34歳でとっくに(1962年)亡くなっていた。
Turq-IMG_0549.jpgイヴ・クラインの青を主に万華鏡を作れたら!
窓辺で、ゆったり、万回、まわすうち、一瞬は、クラインブルーだけが現れる。
世界は一面一色、深みにはまった、青。
「数の美術館」の巻頭に掲げられた「青のモノクロームIKB3」(パリ ポンピドゥーセンター)、そのものだ。
地中海に行かなくても、手はクラインのめざした地中海を持っている。

書き手 荒木和子

過去の記事

全て見る