お知らせ

ブログ fade-out 第7回「祝祭は地上で」

第2会場、第3会場と、たくさんのブースを見て回った。チャールス・カラディモスのブースは超シンプルで、
展示されている万華鏡は1点のみ、ぽつんとあるだけ。その卓上型万華鏡を覗いてみると、1つあればハッピーという、
クリアなミラーに映る色素の采配は、楽しく、うれしく、これぞ、この世の祝祭だった。
中国人作家チェンのブースでは指輪やペンダントにした万華鏡が宝石箱でキラキラしていた。
ボブ・リオのブースではボブ・リオ本人が万華鏡を上まわって人を惹きつける華を発揮していた。
日本人作家もブースを出していて佐藤元洋は作品に「風の住む丘」と名付けて、ハッピーなだけではない情味を出そうといていた。
ホールの基調演説があり、わたしはメアリー・ギブソンの「中古市場の未来」に顔を出した。
「セルの進化」と題した意見交換のルームもあったが、どちらのルームにも日本人の列石はかった。日本人は、購買力が旺盛だった。
新作発表の場面では依田夫妻の作品が群を抜いていた。アメリカ人作家の作品とは情調の面で異なっていた。
出品作の、滝を思わせる仕掛けは、水を持つ惑星につながり、その幻想力が同じ星に住むアメリカ人に理解された。大賞をとった。
来場者参加のゲームがあり、荒金純子が日本を代表して壇上で活躍した。
万華鏡制作クラスがあり、ディスカッションフォーラムがあり、食事会があり、夜通しのダンスの会があった。レセプションパーティーは正式で、
アーチストたちの友愛の表現が垢抜けていた。コンベンションの最終日は、日本勢のパワーが爆発した。孫を抱っこして登壇した今田氏は日本語で言った。
「たった今、京都で、万華鏡美術館がオープンしました!」訳されたとたん、大歓声が上がった。盛大な拍手が続いた。
日本人の余情という美学が前面に躍り出た瞬間だった。
 アメリカでのコンベンションは、人種を超え地上を超えて、友情と親和力にあふれていた。その積極的な明るさに、万華鏡への愛が見えた。
 感動的な別れのあと、わたし達昔館はシアトルのシークレット・ガーデンに招かれていた。ここでも30人ほどの日本人が招かれていた。
 ジュディス宅と同じように手料理が用意されていた、私はおいしいパテを何度も口に運んだ。サリー夫人、デュレット氏、母上、お子さん、
同家の友人といった家庭的な歓待は、日本人をのびのびさせた。テーブルやソファや肘掛椅子でゆったり飲み食いしていた。
デュレット氏はその日本人一行を工房に案内した。別棟の工房は東京大田区にある町工場の規模があり、そこを導きながら「ムカシカンからの注文を受けてね」と、
ピカピカに目立っている機器に案内した。氏はその新品を撫でながら言った。「ソニーのためだけに購入したマシンです!」Sonyは万華鏡頒布会を始めていた。
そしてSonyは、アメリカで超一流の企業だった。
 暮れてきて、日本人はこぞってバスに乗りこんだ。
 浴衣と帯のサリー夫人が道路端で立ちつくし、いつまでも手を振ってバスを見送っていた。浴衣の裾が、スカートさながらに、大陸を渡る風に吹きまくられていた。
2017年の世界万華鏡大会は日本の番になる。

                                                     書き手 荒木和子

過去の記事

全て見る